私達の活動をご支援いただいています。
「悩める飼い主だった我が家の駆け込み寺です」
福井晴敏様[作家・墨田区在住]
我が家にはいま、三匹の猫がいます。
一匹目は元野良猫でした。ある日、当時幼稚園児だった息子と一緒に玄関から入ってきて、そのまま家に上がり込み、以来、我が家の玄関先で、
「来ましたよー」
と鳴くようになったのです。
来ましたよー、と言われても、ウチの猫ではありません。しかし、毎日毎日やって来ては、「来ましたよー」。じゃあ、まあ……と家に入れているうち、外にいる間は近所の車庫に入り込んでこちらの動向を覗い、誰かいるとみるや玄関先に駆けつけ、「来ましたよー」。
ストーカーです。
数週間後、車庫の持ち主の方から、「あんたンちの猫が入り込んで迷惑なんだけど」とオブラートに包んで言われるようになる頃には、ダンボール箱トイレを使いこなすに至っており、もはや『既成事実として我が家の猫』っぽい。一方、猫も、ときに腹を空かせた野良猫を二、三匹連れてきては、「何か喰わせてやってよ」とやる始末で、完全に我が家を自分の家と認識している様子です。
しょうがない、もうウチで飼っちゃうか。
家族会議の結果、そんな結論に落ち着いたのですが……そこである事実に直面しました。
おれたち、誰も猫飼ったことない。
本屋にはたくさんの『猫の飼い方本』が並んでいます。が、『野良猫を家の中で飼えるようにする方法』なんてものに詳しい本はありませんでした。確かノミとかいるんでしょ? というくらいは知っていたものの、ゴミ収集所から塩鮭を咥えて走り出す野良猫相手にはあまりにも貧弱な知識です。
どうしたものか……。
再びの家族会議がもたれ、そこである天啓が舞い降りました。
「近所の猫カフェに訊きに行こう! あそこの猫は元野良だっていうし、きっと色々知っている!」
かくて、『既成事実として我が家の猫』っぽかった猫は、ノミやら寄生虫やらを除かれ、それまで名前も知らなかった猫の病気に関する血液検査や予防接種を受け、首の後ろにICチップだかまで入れられて、『我が家の猫』になりました。しかも、CATS&DOGS CAFEさんのご助言に従って、いわゆる『完全室内飼い』です。最初の数日こそ、「見回りに行かねば! 外に出しておくれ!」と喚いていた彼ですが、いまでは換気のために開けた窓にすら迷惑そうな一瞥を向けるだけで、むしろ、「外の生活はこりごりだよ」とでも言いたい様子。
その後、元捨て猫だったり元野良猫だったりする二匹もCATS&DOGS CAFEさんから迎えましたが、ときに喧嘩しながらも、みな、家の中で勝手気ままに生活しています。別に人間に対して何かしてくれるわけでも、たぶん、恩を感じることもしていないであろう彼らですが、猫とは元来、そんなものなのでしょう。それはたぶん、血統書のついた猫も、あの頃ウチの玄関先で、「来ましたよー」と鳴いていた我が家の猫も変わりありません。
これからも、多くの『元野良猫』や『行き場をなくした猫』と『未来の飼い主たち』の縁を結ぶ場、そして、悩める飼い主たちの駆け込み寺としてCATS&DOGS CAFEさんが存在できますよう、ご支援をお願いいたします。(談)
幼稚園児だった福井さんの息子さん。私はよく覚えています。
著名人とは知らずに「この子の家なら猫あげたいなー」と思ったのでした。それが現実となりました。その後には野良猫保護までしてくれた御一家です。
その子達、ガルルとパンピーは福井ブンゴー(そう呼ばせて貰っています)名付けで里親募集となりました。
優しい御一家は、もはや…お仲間です。(吉田)
福井晴敏さん PROFILE
墨田区に生まれ、墨田区に育ち、現在も墨田区在住。1998年、江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてデビュー。以後、小説だけでなく、アニメや実写映画の原作、ストーリー、脚本など多分野で活躍中。代表作に、『亡国のイージス』『終戦のローレライ』『人類資金』『機動戦士ガンダムUC(機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096)』『宇宙戦艦ヤマト2202(公開年未定)』などがある。