フリーライター 板垣 朝子さん [卒業生 テムズ・アーチー(猫)]
結婚を機に家を探した時の第一の条件が「猫飼育可」。そうして決めた新居に落ち着き、次は猫を探そうとした時、家から徒歩圏にCATS&DOGS CAFEがありました。
「猫を迎えるなら地域にいる飼い主のいない野良猫」「でもどうやって出会えばいいんだろう、マンション住まいではNNN(※ぬこぬこネットワーク、詳しくはこちらを参照)からの派遣も期待薄だし、いきなり外にいる子を捕獲するのはハードル高いし…」と考えていた私達にとって、保護猫と出会える場がこんなに近くにあったのは、運命としか言いようがありません。
猫の飼養経験は全くなし、共働きで生活は不規則、という我が家のスタイルを考えると、子猫よりは成猫の方が良いと思っていました。そうしてカフェに通い始めて2ヶ月ほどたったある日、店のブログに掲載された新スタッフの写真に目が止まりました。テムズ、1才の茶白♂。オスとは思えないぐらい小さくて、少し神経質そうな整った顔つきに釘付けになりました。家人も「この子はうちの子」という運命を感じたそうで、すぐに吉田さんに連絡して「テムズを迎えたい」と伝えました。吉田さんの「多頭飼いのススメ」を受けてパートナーに多頭崩壊から保護された黒白1才♂のアーチーを選び、半月後に2頭の成猫との暮らしが始まりました。シャーロック・ホームズと相棒のジョン・ワトソンのファーストネームから、テムズにはシャーロック、アーチーにはジョンという名前を付けました。
1才になれば性格もほぼ固まっています。頭が良くて慎重で、元野良らしく度胸はあるけどちょっと人は苦手なシャーロックと、人懐っこくて考えるより先に身体がが動くけど実はビビリなジョン。ここが自分の家だと理解したとたんに安心して甘えるジョンを、シャーロックはクールな目で少し離れて見ていました。2週間もすると「この人はごはんをくれる人」という認識はされたようで、朝は起こしに来るようになりましたが、一定の距離以上は決して自分からは近づこうとしませんでした。ブラシを取り出せばジョンは喜んで寄ってきましたが、シャーロックは逃げまわっていました。
それから2年が経ち、それぞれの性格は変わりませんが、人との距離感は確実に近くなっているようです。ジョンはますます人なつっこい甘えん坊になり、1日2回私に膝乗りして思う存分顔を擦り付けるのが日課になりました。我が家を訪れる親しい友人のうち何人かの顔は覚えたようで、おもてなしができるようになる日も近いかもしれません。シャーロックは自分から膝には乗ってこないし抱っこは相変わらず嫌いだしインターフォンが鳴るとダッシュで高いところに逃げて客人がいる間は決して降りてきませんが、普段はお腹を出して寝ているし頭をなでられると嬉しそうな顔をするし、寝ている時にはベッドに上って布団の上から身体をくっつけています。布団の中には決して入らないのが彼なりの距離の取り方のようです。
人から見て猫は保護する対象ではありますが、また独立した意志を持つひとつの命でもあり、その意味では人と変わりはありません。子猫の時から手をかけて我が子として育てる楽しみもありますが、成猫を迎えて大人同士の付き合いと年月をかけた関係性の変化をじっくり楽しむのもまたいいものです。