むぎちゃんはTNR予定の子でした。そのむぎちゃんが横隔膜ヘルニアで猫エイズも陽性という事で保護することになりました。たくさんの方にご支援と応援をして頂き、手術は成功し麻酔からも覚めてくれました。 あとは元気になった姿を見て頂く事が支えて下さった皆様への一番の恩返しになると思っていましたが、それが叶わず悲しく残念です。 今もですが、むぎちゃんの事を思い浮かべると込み上げてしまいます。 チャリティの時も話せませんでしたので、ほんの少しだけ落ち着いた今、長くなりますがむぎちゃんの事を保護主として書かせて頂きます。
その子に出会ったのは去年の10月か11月くらいだったと思います。 ある場所でとても人馴れした大きなオス猫と出会いました。 耳カットもなかったです。状況把握のため何度かその場所に見に行っているうちに何回かに1回、小柄な猫がその大きなオス猫のそばに現れるようになりました。 でもご飯を置いてもほとんどオス猫に食べられてしまうし、オス猫から離れた所で与えても2~3粒食べるとどこかへ消えてしまう子でした。
ある日ウエットを与えてみたら嬉しそうにいつもより多く食べてくれました。それからはその痩せっぽっちの子が気になり毎日通いましたが会えない日の方が多い子でした。 威嚇は全くなく、少し近寄って来ては、こちらも近づくと少し距離を取る感じで、触ることは出来ない距離感でした。
「たぶん女の子っぽいし、こんなに痩せている子が妊娠出産したら負担も大きそうだし早めに手術しないと」と思い、TNRを手伝って頂いている地元のボラさんへ手術の予約と病院への搬送をお願いしました。 ただ、毎回現れる子ではないので捕獲予定日に必ず現れるとは限らない旨を伝えていたところ、ボラさんから捕獲の連絡があったので仕事帰りにボラさん宅へ確認しに行きました。 いつもは暗いところで見ていたのでグレーの子と思ってましたが、麦わら柄のその子は捕獲器の中で大人しく、指を入れてもシャーとも言わず、猫パンチも出してこない子でした。
翌朝、他のTNR予定の猫ちゃんと共に病院へ連れていってもらいましたが、 昼過ぎに「鎮静かけたら開口呼吸始めて命が危険な為、手術は中止しました」とボラさんからメールが来てました。 夕方他のリリース予定の子と共に病院へお迎えに行ってもらい、その子は私のかかりつけの病院へ連れて行って預けてもらいました。
仕事帰りに病院へ寄りレントゲン撮影、エコー、血液検査をしようとしましたが、大人しい小柄なその子からは想像出来ないパワーで大暴れしてしまい、また開口呼吸になってしまいました。先生が「今日は鎮静もかけられて、2ヶ所の病院に連れてこられて猫ちゃんにとってはもの凄い負担がかかってる。少し様子を見て、落ち着いてから負担の少ない落ち着かせる薬を飲ませてから改めて連れてきてあげた方が猫ちゃんのストレスも負担も少ないよ」と言われました。
最初に連れて行った野良猫のTNRを数多くこなしている病院でも「この子はもの凄く暴れる子だね」と言われたらしく「こんなに大人しいのにそんな風には思えないね」とボラさんと言っていましたが確かに実際に見てみると暴れかたは凄まじく、そのまま死んでしまうんではないかと不安に思ったので、先生の言う通り一度連れ帰る事にしました。
その時に、麦わら柄から「むぎちゃん」と名付けました。
キャリーから自宅のケージに移して撫でているとゴロゴロと凄く可愛く喉を鳴らしてくれ、「もっと撫でて~」といった感じに顔を指にグイグイと押し付けて来ました。 横隔膜ヘルニアの影響からお腹が痛かったのか?抱っこは酷く嫌がったため、出来ませんでした。 夜中は声にならないかすれた声でニャーニャーと何度も鳴くので、その度に起きていって「むぎちゃん、なあに?」「どうしたの?怖くないよ~」と顔を覗かせると安心するのか鳴き止みました。本当に可愛くて良い子だなと思いました。
ただ、ひとつ問題がありました。 私が猫活動(TNRや保護)をしていることは家族には内緒にしています。 特に母からは、私が白血病の猫ちゃんを相次いで亡くしたときに「これ以上は増やしちゃダメだよ」と釘を刺されています。 それから1頭増えていますが、その時にも「いい加減にしなさい」と言われてましたので、むぎちゃんの事を話した時には叱られ、呆れられました。
数日後、むぎちゃんの事を吉田さんに話すと前から私の状況をご存じなので「こちらに連れてきていいよ」と言っていただきました。鈴木さんより車搬送のお申し出も頂き、吉田さんのかかりつけ病院へ連れていき検査し、手術する事になりました。 その後、吉田さんのブログでチャリティを呼び掛けて頂き、皆様より多大なご支援と多くの励ましの声を頂きました。
入院中のむぎちゃんはずっと酸素室の中で撫でることもままならず、結局私は一度も抱っこすることが出来ませんでした。 「むぎちゃん」と呼び掛けるとヨロヨロと起き上がってくれたり、声は出ませんでしたが「にゃ~」と答えてくれました。 毎日出来るだけ沢山話しかけました。
むぎちゃんも生きようと一生懸命頑張ってくれていたと思います。 でも私の呼び掛けに応えようと無理をさせてしまったのかもしれません。 私は臨終には立ち会えませんでしたが、最期に吉田さんに抱っこして頂きむぎちゃんは嬉しかったと思います。 本当に沢山の方に存在を知って頂き応援して頂き、人知れず生きている他の野良ちゃんに比べとても恵まれた幸せな子でした。
むぎちゃんを亡くした悲しみが未だ癒えないまま、野良猫の繁殖期に突入しTNRは待ったなしの状況です。 先日捕獲したミントンから新たな命が誕生しました。 残念ながら茶トラ君は亡くなってしまいましたが、むぎちゃんや茶トラ君みたいな子を増やさない為にも、私が出来ることはTNRしか無いかなと思います。 お外で生きる猫ちゃん達は本当に過酷です。 全ての子を保護することは不可能で、これからもTNRをしていくしか無いかと思いますが終わりが全く見えず、心が折れそうになることも多々あります。
私一人では力不足ですが、たくさんの方の助けがあり活動が出来ています。 どうか温かく見守って頂けると嬉しいです。 むぎちゃんにお心を寄せて下さった皆様に、改めて深く深く感謝申し上げます。
保護主 永井